再び魚の話しに戻り、イワナとヤマメはどちらがうまいかという話しになった。
小形,中本等と3人で東北の山を2週間歩いた時、焼石連峰の縦走を終えて夏油温泉に下り、そこから一関に向かうクシ−の中で運転手とその話しになったことがあった。その時運転手が、少しだけ食べるのならヤマメがうまい。けれど沢山食べるならイワナだと言った。イワナの味は飽きが来ないというのだ。私はその考え方が分かる気がした。
それとは少し違うかもしれないが、私達が山で釣った魚を焼く時、すぐ食べるのならジュウジュウと油が垂れるくらいに焼いたところで食べる。この食べ方ではヤマメの方が断然うまい。けれど、焼いた魚を持ち歩く場合はおき火で水分も油もなくなるまで完全に焼き枯らして新聞紙に包む。こうすると夏でも3〜4日はもつのだ。こういう焼き方をするとイワナの方がうまい。
薫製をつくるとヤマメはイリコみたいになってパサパサして旨みがないのに対してイワナは噛むほどに味が出るようになる。同様に焼くとまずいニジマスも薫製にするとうまくなる。
ジュ−シ−に焼いたヤマメはうまいが一度に沢山は食べられない。それに対して、焼き枯らしたイワナはいくらでも食べられる。タクシ−の運転手が言ったのはそう言うこはないだろうか。主人も『イワナの方が味があるな』と言った。
これはしかし、それぞれの魚に適した食べ方の違いを言っているのであって、どちらが旨いということの答えではない。どちらが旨いかという問題は、どちらが好きかということに関わっていて、つまるところその人の好みに帰するのだろう。
小形は黙っていた(彼は必ずヤマメを先に食べる)が、彼の目は『どっちだっていい。まずは食べる魚を目の前まで持って(釣って)来ることが先決なのだ。』と言っていた。釣ってきた者の余裕であろうか。イワナは焼き枯らして明日食べることにする。
こうして大平宿の夜は、予期せぬプレミアを伴って更けていった。
絶対無音
『旅館ではないから特別なことはできないよ。同じものを食べてもらうよ』と言って、出される料理は朴訥で飾り気のない遠慮のいらないものばかりで、それをまるで家族の一員でもあるかのように好き勝手にわいわい喋りながら食べて飲んで、眠くなったらそのまま寝てしまっもいいような居心地のよさ。
その上に『よかったらここは30人くらいは泊まれるから使っていいよ』,『私達は毎週金曜日から日曜日まで来てるから寄って下さい。電話してからでもいいし、パッと来てもいいよ』とまで言ってもらった。小形も私もここがすっかり気にいってしまった。
特筆すべきことは、私達に対するもてなしが客のための特別の演出ではなく、その人達のそこでの生活のありようそのものであると言うことである。それは私達を家族同然に迎え入れると言うことに他ならない。
尽きない話しが何かの拍子に一瞬途切れ、座が静まり返る時がある。その時、誰もがじっと火を見つめ、静寂が人々の心を一つにつなぐ。誰もがこの夜の出会いを忘れまいと思う。そういう時に誰かがアクビをしたりすると、それを潮に『もう休もうか』となり、楽しかった団らんも心を後に残しながら終わりを迎える。大平宿での思わぬ出会いのぬくもりを心に刻み込んで床に就く。
静寂とは必ずしも音のない世界ではない。かすかな葉擦れの音とか、柱がきしむ音、時おり屋根をたたく木の実,虫の音,正体不明の音・・等々,そういう純粋な音がかえって静寂の深さをきわだたせる場合がある。けれど、この夜の大平宿はどこまでも無音であった。
アーカイブをご覧いただけます。21 March 2008
イワナ・ヤマメ談議
炉辺談話はずむ
鍋がグツグツ煮え、夫人がそれに味噌で味をつけてから、次に大皿たっぷりのワラビと山盛りの漬物を出してくれた。私がワラビのとろろのことを話すと夫婦は、『それは知らなかった。今度やってみる』と言い、さらに私が『ウワバミソウも根っこの部分をよく洗ってたたいてとろろにするとうまい』と言うと『ウワバミソウは知らない』と言うので『ミズナのことだ』と言うと『それならここの沢にいっぱいある』と言った。
私達が沢で使うのは、たいていこのミズナかフキで、なければサワアザミ。油で炒めてしょうゆで味をつけるだけだが、あるとないとでは食事の内容がうんと違うのでフライパンと油,醤油は欠かせないのだ〜,等と話しているところへ小形が22〜23cmくらいのイワナを2尾釣って帰ってきた。そこから釣りの話しになる。
主人は釣りはやらないがイワナはよく捕ったと言った。その捕り方は無理捕りと言うやつで紹介を憚られる。海でも川でも漁は楽しいが、私達は無理捕りはしないし、イワナ,ヤマメに関してはあくまでも釣りでなくてはならないと考えている。
小形が風呂から上がってきたところで焼肉が始まったが、私は肉より大根葉とワラビ専門で、大皿にたっぷりあったのをほとんど1人で頂いた。
所沢氏の『知人がマイタケを見つけてそれを民宿に持ち込んだら宿代を只にしてくれたのだが、別の所でその話しをしたら「馬鹿なことをした。3万円ものだ」と言われた〜』と言う話しからキノコの話しになった。
小形がトンビマイタケの話しを出すと、主人はシロマイタケの話しをした。私はブナハリタケが好きなのだが主人はそれは知らないと言い、ムキタケのことも知らないと言った。キノコは土地によって採れる種類も好みも異なる傾向が強いからか,なかなか話しが噛み合わず、いささか盛り上がりに欠けた。
私達が沢で使うのは、たいていこのミズナかフキで、なければサワアザミ。油で炒めてしょうゆで味をつけるだけだが、あるとないとでは食事の内容がうんと違うのでフライパンと油,醤油は欠かせないのだ〜,等と話しているところへ小形が22〜23cmくらいのイワナを2尾釣って帰ってきた。そこから釣りの話しになる。
主人は釣りはやらないがイワナはよく捕ったと言った。その捕り方は無理捕りと言うやつで紹介を憚られる。海でも川でも漁は楽しいが、私達は無理捕りはしないし、イワナ,ヤマメに関してはあくまでも釣りでなくてはならないと考えている。
小形が風呂から上がってきたところで焼肉が始まったが、私は肉より大根葉とワラビ専門で、大皿にたっぷりあったのをほとんど1人で頂いた。
所沢氏の『知人がマイタケを見つけてそれを民宿に持ち込んだら宿代を只にしてくれたのだが、別の所でその話しをしたら「馬鹿なことをした。3万円ものだ」と言われた〜』と言う話しからキノコの話しになった。
小形がトンビマイタケの話しを出すと、主人はシロマイタケの話しをした。私はブナハリタケが好きなのだが主人はそれは知らないと言い、ムキタケのことも知らないと言った。キノコは土地によって採れる種類も好みも異なる傾向が強いからか,なかなか話しが噛み合わず、いささか盛り上がりに欠けた。















